ジュエリー・バイヤーズ・ダイアリー

2013年12月27日

2013年12月相場プレビュー

ここ数年は12月になると、翌年の先行き不安から、相場が軟調になることが多かったように思いますが、今年は、例年とは違い、12月も宝飾品の相場が下がらず、横ばいかやや強気な相場模様でした。

特に高いのが、ダイヤモンド(特に1ct未満の小さいサイズ)と、カラーストーン(特にエメラルドやルビー、サファイア)。

ダイヤモンドは、夏の間、様子見ムードの強かったインド人バイヤーが年末から積極的に「買い」に入っていることが全体的な相場の上昇を招いています。

カラーストーンは、インド人、中国人、日本人と玉石混合の様子で、特に品質の高いエメラルドや、無処理(非加熱)のルビー、サファイアは、まだ相場が上がり続けている印象です。

その影響なのか、レッドトルマリン=ルベライトや、グリーントルマリンの相場も高くなってきました。

逆に、軟調な相場となっているのが貴金属(金・プラチナ)です。

海外では、一時1700ドル以上あった金価格も、現在は、1200ドル近辺。実に3割程度の下落となっています。それでも国内取引価格は大きな変化がないのは、ドル円の為替が2~3割程度、円安となっているためです。

これが仮に円高に少し動くと、国内の貴金属価格は、大きく下落してしまいますので、貴金属相場の今後の値動きは十分、注意が必要な状況です。

今後の焦点としては、2014年4月の消費税増税後の相場の動きがどうなるのかがポイントとなりそうです。

大方の見方としては、増税の影響で、消費が停滞し、一時的には相場が下落する可能性が高いのですが、2020年のオリンピック開催に向けて、全体的な相場は上昇し続けると見られています。

今までのデフレの環境と、180度異なる環境となり、大きな変化となりますが、その変化に合わせて、自分達が変わっていくことがとても大切だと思います。今は、まさに適応力の時代ですね。

2013年12月17日

カラーストーンの産地について

以前に比べて、カラーストーンの「産地」の重要性が高まってきています。

それは、今まで産出されていなかった地域、特にアフリカ大陸から、様々な宝石が採掘され、市場に流通していることが大きな原因です。

例えば、モザンビーク産やタンザニア産、マダガスカル産のルビーやサファイア。モザンビーク産のパライバ・トルマリン。マダガスカル産のアクアマリンなどです。

普段、私たちが口にする食物は、生産地の情報開示が進んでいて、スーパーなどでも、必ずどこでとれたものなのかを表示する義務がありますが、宝飾品業界は、その点では、とても遅れていて、産地を開示して販売するお店がとても少ないのが実状です。

その原因は、宝石が採れた産地から、小売店などに直接仕入れることができれば、どこの産地であるかを確実に開示できるのですが、多くの宝石の場合、原産地で採れたものは、一旦、タイやインドなどの宝石集積地に集められて、そこで研磨や処理の工程を経てから、さらに宝石輸出入業者の手を経て、小売店に流通しているため、産地についての情報が、曖昧になってしまっています。

また、一旦、分からなくなった産地を調べるには、鑑別機関で産地証明を取得する必要がありますが、その費用が30,000円程度必要なので、よほど高価な宝石でないと、その証明コストが合わず、結局、産地不明のまま、流通・販売されることになります。

当店でも、できるだけ産地に関する情報を開示するように努めておりますが、まだまだ判断が難しい石も多く、産地不明で販売せざるを得ない商品があるのが実状です。

ただし、特に高額なカラーストーンで、産地がどこであるかが重要な宝石に関しては、極力、鑑別機関で産地証明を取得するなどして、よりお客様に安心して宝石の購入を楽しんでいただけるように、力を尽くしていきたいと考えております。

また同時に、アフリカ産だから、一律に悪いということではなく、アフリカ産でも、もちろん良いものは採れますので、産地に捉われすぎずに、あくまでもその石が美しいか否かという原点を大切にしていきたいと考えております。

そして、カラーストーンは品質評価の知識、カットについての知識、処理方法の知識、産地の知識など、とても奥が深くおもしろい宝石なので、今後も継続して勉強していき、よりレベルの高い商品説明や、情報提供ができるようにスタッフ一同、協力して取り組んでまいります。

ミャンマー産 非加熱ルビー

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2013年12月 9日

11月のダイヤモンド市況

11月は、クリスマスショッピングシーズンの需要が高まり研磨済みダイヤモンド価格は安定的でした。

ラパポートの相場インデックスによると、11月は0.3ct:1.4%上昇、0.5ct:0.2%上昇、1.0ct:0.1%下落、3.0ct:0.3%下落という数値になりました。

グレード的にまずまずの需要があったのは、カラーH~J、クラリティSI1~SI2クラスのダイヤで、その他、特に需要が高かったのが、高品質なカラーダイヤモンドでした。

原石ダイヤモンド取引はデビアスが11月のサイトで価格を約3-5%下げたので改善されました。 12月に予定されている今年最後のサイト(取引会)は、サイトホールダー(取引権利を持つ業者)が前回のサイトで購入を先送りしたので、かなり大規模なものになる予定です。特に大きな原石の入札には需要が高く、高価格になると予想されています。

世界のダイヤモンド市場はホリデーシーズンに後押しされて何とか好調を維持していますが、過去数年のレベルより全体的な取引は低調です。

今後の流れとしては、12月と1月は、アメリカのクリスマス商戦で最後の追い込みがあり、また1月31日に始まる中国の正月に備えて、需要が高まるので若干、楽観的なムードが漂っています。

一方で、中国の景気先行き懸念や、腐敗撲滅キャンペーン等により、特にサイズの大きなダイヤモンドの相場は流動的で、注意が必要になりそうです。

2013年12月 4日

鑑別書に見られる日本と世界の違い

GIAの東京ラボができて以来、当社でも、カラーストーンやダイヤモンドの鑑別・鑑定でお世話になっています。

GIAでは簡易鑑別(日本でのソーティングメモ)サービスは行っていないため、鑑別料金は、日本の 鑑別機関の料金に比べて数倍高いのですが、それでも、その鑑別技術・品質を考えるとやむを得ないかと思います。

例えば、ルビーの鑑別において日本の鑑別機関において

「色の変化を目的とした加熱が行われています」

というコメントがついた宝石が、GIAでレポートを作成すると、以下のようなコメントが記載される場合が多いです。

「Indications of heating with minor residues in fissures.」=「加熱の痕跡と亀裂にわずかな残留物を認める」

ルビーは加熱処理する過程で、保護のために使うborax(硼砂)が融けてガラス状になり亀裂に残ることが多いため、GIAでは残留物の程度に応じて、コメントを使い分けています。

日本では、少しの残留物は当たり前・しょうがないという認識なのか、残留物が少ない場合には、あえてコメントしないケースが多いようです。

同様にエメラルドの無色透明材の含侵も、日本では「透明度の改善を目的とした無色透明材の含浸が行われています。」と1パターンのみですが、GIAでは含浸の程度を「わずかな」・「中程度」・「著しい」に分けてコメントしています。

つまり、日本の鑑別よりも、GIA(世界)の鑑別のほうがより、処理コメントの開示がより、厳密で、レベルが高いように感じています。

日本で普段、日本の鑑別書しか取り扱っていないと、世界標準が分からずに、日本の鑑別書があれば、世界でも通用すると思い込んでしまいがちです。しかし、実際には、日本国内でしか通用しない鑑別書が多いのが、現実のようです。

カラーストーンの鑑別で、国内で信頼できる機関は、中央宝石研究所、ジェムリサーチジャパンの2社ですが、今後は、世界的に信頼度の高いGIAが運営するGIA東京ラボも少しづつ存在感を大きくしていくかもしません。

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2013年11月21日

2013年カラーストーン相場

2013年は、低調なダイヤモンド相場とは異なり、カラーストーン相場は大幅に上昇しました。

特に、中国で人気の高い赤や緑のカラーストーン(=赤さんご、ジェダイト(翡翠)、ルビー、エメラルド等)の相場上昇はバブルの様相です。感覚ベースですが、2012年よりも3~5割程度、上昇した印象です。

また、最近では、ルビーやサファイアの良質でサイズの大きなものは、古くからの産地(アジアエリア)での産出量が減少しているため、アフリカ産のものがとても多くなってきています。

もちろんアフリカ産のものでも良いものはありますが、アジア(ミャンマー、スリランカ、カシミール地方等)の人気は根強く、それらの産地の宝石を求めて、日本に埋蔵するユーズド・ジュエリーへの注目が高まり続けています。

来年もこの調子で相場が上昇し続けるのか否かは分かりませんが、ずっと上がり続けることは考えにくいので、どこかのタイミングで一度、調整が入るのではないかと思います。

一方で、長期的には、天然で良質なものは、数が少なくなることは明白なので、相場が上がっていくことが予想されます。

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2013年11月11日

インドのダイヤモンド輸入税アップ?

インド政府が研磨済みダイヤモンドの輸入税を2%から5%に引き上げることを検討しているようです。

今回の増税の動機は、インド国内の小規模製造業者を研磨済みダイヤモンド貿易から守るというものです。

保護貿易的な考え方は、時代遅れな気がしますが、日本でも、国内産業保護のために、同じようなことをしているので、どこの国でも、やることは同じようです。

下のグラフを見れば分かるように、2012年に比べて、2013年は、インドの研磨済みダイヤモンド輸入量も回復基調ではあるのですが、本当に、この増税が実施されると、また大きく下落してしまうことが予想されます。

India RAPAPORT WEEKLY REPORT 1 November 2013 より

日本においても、インド人バイヤーの動向次第で、大きく相場が変動する状況なので、本当に増税されるのか否か、注意して見守っていく必要がありそうです。

2013年11月 4日

人工合成ダイヤモンド(CVD)の問題

人工ダイヤモンド(通称CVD)の問題が懸念されています。

国際的な鑑別機関IGIでは、2012年5月にアントワープとムンバイで、天然ダイヤモンドとして持ち込まれた何百もの人工ダイヤを鑑別したそうです。

IgiRAPAPORT WEEKLY REPORT 25 October 2013 より

合成ダイヤを製造しているシオ・ダイアモンド・テクノロジー株式会社のCEOによると、2014年の夏までに現在の年間生産量(30,000〜40,000カラット)の10倍の生産を実現するための設備を中国に設置するために米国とイスラエルのパートナーと合弁会社設立契約に署名したそうです。

それらの人工ダイヤモンドを鑑別することは技術的に可能ではありますが、問題は、0.05ct未満の小さなメレダイヤのCVDを、天然のメレダイヤに混ぜて流通させる悪質な業者の存在が懸念されています。

0.3ctのCVDを鑑別することと、0.01ctのCVDを鑑別することと、手間や時間は同じなので、鑑別するダイヤの数が小さくなり、数が増えるほど、鑑別するコストもそれに応じて増加するため、0.05ct未満のダイヤモンドが、CVDのチェックをされずに、市場に流通するリスクが高くなってしまいます。

これまでは、メインのカラーストーンやダイヤモンドの鑑別のみ取得して、脇石の鑑別については、特に、鑑別をしていない製品が多く流通していますが、今後は、脇石(ダイヤモンド)についても、鑑別を行っていくことが当たり前の時代になってくるかもしれません。

当社でも、知らず知らずのうちに、人工ダイヤモンドを取り扱ってしまうリスクを最小限に抑えるために、鑑別機関との協力関係をより密にしていきたいと思います。

2013年10月27日

カラーダイヤモンドブーム?バブル?

無色のダイヤモンド相場が軟調な動きを見せる中、カラーダイヤモンドの相場が10年間、上昇し続けています。

特にこの1~2年で、ピンクダイヤモンドの相場が約30%、ビビットイエローダイヤモンドの相場が35%、低品質のイエローダイヤモンドが約10%、ファンシーブルーダイヤモンドの相場が約35%上昇しました。

理由としては、カラーダイヤを好む中東やアジアの投資家の需要が高まったこと、それに伴い、カラーダイヤを扱うバイヤー、サプライヤーが増加したことが大きな要因です。

一方で、投資家の関心がさめてしまった場合に起こる急激な相場の下落=バブル崩壊を心配する声も少なからず聞くことができます。

このカラーダイヤモンド相場の上昇、人気がこのまま続くのか、または、一時的なバブルなのか、相場の行方に注意が必要です。

個人的には、希少性が高い、サイズの大きく、色が鮮明なカラーダイヤモンドについては、今後も、価格が上昇し続けるだろうと考えています。

カラーの鮮明さはもちろんですが、今後は、クラリティの高さについても、重要度がより増してくるものと思います。

11月に世界最大のオレンジダイヤモンドがクリスティーズのオークションに出品される予定です。

オレンジ(Ⅱ型)、VS1、ペアシェイプカット。予想落札価格は、17億~20億円となっています。

OrangeRAPAPORT WEEKLY REPORT 18 October 2013 より

2013年10月14日

Sotheby’s Hong Kong Auction on October 7, 2013.

2013年10月7日にサザビーズの宝飾品オークションが開催されました。

出品された商品全体の75%が売買成約し、総額約100億円!の出来高だったそうです。

今回のオークションの目玉として出品された商品の1つが、「The Premier Blue」と命名されたラウンドブリリアントカットの7.59ct、FANCY VIVID BLUE、IF(GIA)のダイヤモンド。

The_premier_blueオークションの結果は・・・約15億8千万円(1ct当たり2億8百万円)。

対して、売り手の希望価格が約18億6千万円(1ct当たり2億4千5百万円)・・・すさまじい世界です。

一方で、ホワイトダイヤモンドの落札価格として、史上最高額を更新したダイヤモンドがこちら↓

「118カラットのホワイトダイヤに史上最高額、香港サザビーズオークション」

http://www.afpbb.com/articles/-/3001009

オークション全体の買い手としては、アジアのコレクターが大部分を占めていたようです。

最近、業界的には、明るいニュースが少なかったので、このように高額なダイヤモンドの取引が行われるだけでも、うれしい限りです。

そして、いつかは、当社でも・・・。

2013年10月 5日

インドダイヤモンド産業の危機

インドのダイヤモンド産業が2008年のリーマンショック以来の危機的な状況に立たされているようです。

急激なルピー安のため、ダイヤモンド原石を購入して、研磨後、輸出しようとしても、利益が出ないことが一番の要因です。

また、そのような状況を見た銀行が、融資をストップしているため、資金的にも困窮している企業がほとんどです。

そして、もはや、0.3ct未満のダイヤモンドの研磨は、ほとんどストップしているのが現状のようです。

そのため、最近では、アメリカや東アジアの強い需要に応えるため、研磨済みのダイヤモンドの価格が上昇しています。

原石の価格は主に、デビアス社がコントロールしていますが、このような状況では、今のままの原石価格では、市場の需要供給のバランスがおかしいので、遅かれ早かれ、原石価格も見直しされるようになるかもしれません。

そうなった場合に、すでに研磨されたダイヤモンドの価格にも影響が出るのか否かが、非常に気になるところです。

最近のインド人のバイヤー、サプライヤーを見ていると、できるだけ、大きなダイヤモンドを手放したがっている(売りたがっている)ように感じますので、このままいくと、おそらく原石ダイヤモンド、研磨ダイヤモンドともに、少し価格が下落する可能性が高いのだろうと思います。

日本では、円安の影響で、価格が保たれていますが、インドの状況は、とても不安定で、主要な需要国である中国も、先行きは不透明なので、今後の相場の動きには十分に注意が必要になりそうです。

ではいつ売るのか?今で・・・それぞれの判断で。

Indiam RAPAPORT WEEKLY REPORT 4 October 2013 より